『人生の特等席』
イーストウッドはもちろんだけど密かにエイミー・アダムスの出演作にハズレなし、と思っているのでロバート・ロレンツ監督『人生の特等席』(しかしこのHPのやる気のなさは酷い…)を見てみて、なんか、ここまで予告を見た時点で想像した通りの、一切の野心を感じない映画も久しぶりだなと逆に感心してしまった。どこまで意識してるのかわからないけど、ほんとにマイナーリーグの試合をビール片手にダラダラ眺める(きちんと逆転ホームランは起こるし)くらいのノリで見るのがいいんじゃないでしょうか。内容的には『マネーボール』に喧嘩売ってんのかってくらい真逆の話になってましたが。
頑固者で偏屈な年老いた父親と、彼とは距離を置いている勝ち気な弁護士の娘、エイミーちゃんの巻き髪の巻きがゆるくなるにつれてふたりの心の壁も取り払われていく、その合間にちょっと可愛いロマンスもあり。特に大きな不満はないけれど、さすがにもうちょっとエモーショナルに盛り上がる瞬間があってもよかったんじゃないかなあ。夜中の湖や路上のダンスはもったいなかったし、いくらなんでもイーストウッドに頼り過ぎたか。もちろん相変わらず凶暴な大型犬のようにうーっとうなり声を響かせるイーストウッドを見てるだけでも十分楽しかったんだけど(映画が始まってすぐのイーストウッドの第一声の会話相手が予想外過ぎたのは笑った)。これを、父親の職業を映画監督にして、若いふたりがシネフィルクイズで遊んでる話に置き換えてみると、結構気持ち悪いですよ。
しかしまあ映画の細部よりも、自分の助監督としてずっと働いていた部下の監督デビュー作にスタッフも総動員して自ら主演までする、イーストウッドとその仲間たちの思いだけでもちょっと泣けるので、良い作品なんだと思う。観賞後にはまんまとピザを食べてしまった。