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4.18

『ザ・マスター』

周りでの賛否がここまで分かれる映画も最近じゃ珍しいんじゃないかしら、ポール・トーマス・アンダーソン監督『ザ・マスター』の個人的な感想としては、なんか変な映画やなあ、トラウマ、分裂、権力、アメリカって相変わらず病んでるなあ、って感じで、特に大きな感動もなかった、という非常に適当なものに。いつもか。
アル中且つ情緒超不安定の暴れん坊な主人公がひょんなことから新興宗教の教祖と出会い、そこにのめり込むような逃げ出したいような、人間の孤独を描いてるはずの映画が、私には途中からふたりの関係が獰猛なドーベルマン(特にあの拘置所のホアキンの犬っぽさ)をなんとかてなずけようとしてる飼い主に見えてきて(まあその飼い主は更に簡単な方法で妻に飼い慣らされてるのだが…)、こういうプラトニックでピュアな男同士の主従関係に、でもなんのカタルシスもないっぽい感じはよかった(勝手に見出す人は見出すんだろうけど)。138分、長いとは感じなかったけれど、一度くらいこのふたりがやり合ったり飼い犬に本気で噛まれる瞬間があるのかなと思っていたらそんなことはなく、終わった瞬間「え!?」とちょっと思ってしまったが、もちろんそんなことはわざとだろうし。のわりにはちょっと色々大袈裟過ぎたかな。
冒頭の逃走シーンや謎のバイクシーン、何この違和感と思ったら65ミリで撮られてるのですねこれ。その画面の迫力でホフマンのあの距離の熱唱はちょっとしんどかった…。しかしいつの世もカリスマってのは絶倫なのかね。
今作の役作りのためか脅威の激痩せなホアキン・フェニックス、さすがに今回は歩き方から喋り方からちょっとやり過ぎ感が否めず、年寄りを演じてる松ちゃんのコントみたいやなと思ってしまいました。ウチの近所には多分日本最大級のサイエントロジー事務所があります(でもこのマスターの教えは基本的に『クラウドアトラス』が本気で言ってたことよな…)。