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1.07

『楽隊のうさぎ』

青春と呼ぶにもまだ早いような、小・中学生たちの合唱や楽器ものにすこぶる弱いもんで、鈴木卓爾監督『楽隊のうさぎ』 にも泣く気満々で向かったのだが、そんな思いはあっさり裏切られる、驚くほどノーカタルシスな作品だった。でもすごく良かった。
地方都市に平凡な家族と生活するブカブカの学ランを着た平凡な男子中学生(でもよく見ると綾野剛似)が、うさぎに導かれるまま吹奏楽部に入部し、うさぎに見守られながらティンパニを叩いて、ただ部活をそれなりにエンジョイしている姿。部活内でちょこちょこ問題が起こったりもするけれど、だからと言って何か感動的な展開があるわけでなく、最後の定期演奏会にドラマがあるわけでなく。地味と言えば地味、でもその地味さレベルの高さがすごい。顧問を演じる宮崎将の微妙な存在感もすごい。
登場する吹奏楽部のメンバーたちは舞台となる浜松市からオーディションで選ばれた素人の中学生らしく、劇中での音楽も実際にその子たちの演奏を録音したものだそうな。なので、部室で練習してる姿なんかはドキュメンタリー的な面白さにも満ちていて、子どもたちの顔を見てるだけでも十分面白かったり、かと思えばフィクションでしかないうさぎ(もんぺ姿)がなんの説明もなく主人公の前に現れたり(現れるだけで、特になにもしない)。その両方が違和感なくひとつの映画にはまってるから、不思議な作品。で、中々派手に地味をやり散らかすなあと感心しているところに、最後に突然こっ恥ずかしくなるような熱い瞬間があったのには、やられた。