3.10
『小さいおうち』
重い腰を上げてようやく、山田洋次監督『小さいおうち』を鑑賞。偉いでしょ。
昭和11年東京郊外の赤い屋根が印象的な家に住む夫婦と幼い息子と住み込みで働く女中、その女中が60年後に書いた自叙伝を通して語られる家族の秘密。それは美しく貞淑なはずの妻が、密かに夫の部下である若い青年と不倫していた、って話なんだけど、ストーリー自体は戦時中の禁断の恋ってだいぶ艶っぽいはずなのに、映画にまったく色気がないもんだから、困った。だいたい、危険を冒してまで惚れる相手を演じるのが吉岡秀隆ってどうかと思うし。汗に濡れたうなじをこれ見よがしに見せられてもちょっとねえ。松たか子の、歪んだ口角が押さえきれない性欲を現してる感じは悪くないとは思ったけど。しかし、戦争という理不尽極まりない理由で引き裂かれる男女なら、NHK「ごちそうさん」の方がはるかに感動的でございました(最終的におたふく(黒木華)の行動はこいつのどうでもいい正義感からなのか恋心からなのか?)。お金あるなら空襲シーンはもうちょっと頑張ってほしかった。
もちろんそれ以外にも、本気なのか冗談なのかよくわからない演出の連続に戸惑ったり、ペラペラ喋り過ぎなセリフの連続に戸惑ったり(帯の柄の変化くらい見てたら気付くっつーの)、中途半端な戦争批判に戸惑ったり、色々、やっぱり無理という結果に。妻夫木は着々と山田ファミリーの孫になっていくのかね(で書きながら思ったけど東出くんには絶対こっちに行ってほしくない)。