3.12
『抱きしめたい』
祝復活!ということで塩田明彦監督最新作『抱きしめたい』 を鑑賞。
交通事故で左半身と記憶力に障害を持ってしまった仏頂面の北川景子と、「網走アルカトラズ」で活躍するナイスガイなタクシー運転手錦戸亮の、実話を元にしたラブストーリー。と聞くと、まただいぶしょうもない難病モノの邦画かよと思ってしまいそうになるも(事実予告を見た時点では監督が誰かわからず、たいして見る気にもならなかったのだが) 、いわゆるお涙頂戴にはなっておらず、むしろしみったれた恋愛ものなんかよりよっぽど爽やかな仕上がりでございました。もちろんウルっとしそうになるところは沢山あったけど、それは役者の方々の演技がとにかく素晴らしかったりで、更に言えばそれを演出してる塩田監督の力に感動してしまいました。ほんとにおかえりなさい。ラストの衝撃の省略には度肝抜かれました。
というのも、これまたとても面白かった監督の著書「映画術」を読んだばかりという影響も大いにあると思うけど、見てるときには気付かなくても、後から思い返してみて「ああやっぱりすごい」と思うところが多々あり。健常者の錦戸くんと車椅子に乗った景子ちゃんの距離が縮まっていく過程が、やたらと出てくるお姫様抱っこやテーブルを挟んで食べるご飯、さらには胸キュン度100%の回転木馬とふたり並んでベッドに寝る、と言う具合に具体的な高さの変化によって現れてるのが特に印象的。ふたりが決定的に付き合うきっかけになったのは、二階のアパートまで「来ちゃった」ことだし(さすがにあのシーンは爆笑したけど)。
個人的には、『どこまでもいこう』とか『害虫』『カナリア』のようなダークな作品より、塩田監督にはこういうぱっと見「恥ずかしい」作品をたくさん撮って頂きたい。