『タリーと私の秘密の時間』
私みたいな人間(アラフォー子ナシの独身)でも落涙してしまったのに、同年代でワンオペ育児してる友だちが見たらどうなるんだろうと不安になったジェイソン・ライトマン監督『タリーと私の秘密の時間』。映画の鍵となる「タリー」が登場した瞬間その正体はピンときたけれど、さすがに感心する面白さでした。
幼い子どもふたり(次男は問題児)を抱えたところに新生児を迎えた、特にお金持ちでもないし、旦那が暴君でもない、多分とても平凡な専業主婦マーロの元に現れた20代の完璧なナイトシッター(なんてものがあるなんで初めて知った)タリー。十分な睡眠をとれる、その贅沢さが彼女に変化をもたらしていく。というお話が「育児ノイローゼーに苦しむ中年女性」という単純なステレオタイプになっていないのは、セロン姐さん演じるマーロが、現実のしんどさや自分が自己実現を成し遂げられなかった理由を決して旦那や子どものせいにするわけではなく、セロン姐さんの周囲の人々(旦那や校長や兄嫁など)が悪意をもって彼女をいじめてるわけでもない、ただ誰にも頼らずひとりで子どもを3人育てることはめちゃくちゃ大変というか不可能なんだと当然っちゃあ当然なことを言ってくれているからじゃなかろうか。飼い猫がうるさいときですら耐え切れず怒鳴ってる私が言うのもどうかと思いますが。
息子ライトマン監督の作品は今までも好きやったけどイマイチつかみ所のない面白さやなと思ってたけど、今回はそれがいつもよりはっきりした感じ。そして、『ヤング≒アダルト』のパンスト一丁に続き、手術着のおむつ姿まで披露したシャーリーズ・セロンはマジで尊敬に値する。もちろんデニーロばりの体格改造も(この人って、シャローン・ストーンがやろうとして失敗したことをスマートに実現してる感じあるよね)。