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2.27

『ファースト・マン』

月にぶっ込む初めてのロケットがファーストマンかエロいなとヘラヘラ笑っている間に上映館がなくなりそうになってたので急いでデイミアン・チャゼル監督『ファースト・マン』を見に行ったら、これが驚きの面白さで、チャゼルくんを見る目がだいぶ変わった。
人類史上初めて月面を歩いたニール・アームストロングの伝記映画、というアメリカにとって華々しい歴史であるはずの物語が、劇中に二回お葬式が登場するとはいえ、最初から最後まで葬式か!ってくらいに、暗い。そして宇宙の話なはずなのに、めちゃくちゃ狭い。自宅とNASAの往復。さらに黒人の叫びは響くけど、アポロ計画成功後のラストにはなんのカタルシスも響かない。この陰惨さはちょっとすごい。ZOZOの前澤と監督が対談してたみたいやけど、ふたりの月に対する思いは真逆だと思われます。なので日本でヒットしないのも当然か、と。
どんなに際どい危険な事故が起こっても、家族に責められても、ただ黙々と何かに取り憑かれたようにロケットに乗り続けるアームストロングは、もはや狂人。たまたま、ほんとにたまたま月に行くことに成功しただけで、ひとりの男性としても父親としてもかなりダメな奴だと思うんだけど、そのことに妻以外誰も突っ込まないのな(後にこの夫婦は離婚したと知って、そりゃそうだろうなと思った)。
アームストロングのヘルメット越しに見える風景、聞こえる音、本人が無口な代わりに鳴り響く轟音も魅力的で、これは映画館で見た方がいいかと。