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3.19

『月夜釜合戦』

実は以前にいちど試写で拝見してる佐藤零郎監督『月夜釜合戦』ですが、なんか、地元のど真ん中が映画やTVに映ってると落ちつかない感覚、知りあいとかよく行く場所とかが映ってるんちゃうかとそわそわしてしまうのってあるじゃないですか、「渥美ボクシングジム」でググってもらえばでわかると思うんですが、とにかくそういう理由からいまいち冷静に見れなかったこともあり、祝・東京公開! ということで劇場で再見。
大阪は西成の釜ヶ崎と呼ばれる日雇い労働者の街で、私娼の女や怪しげな用心棒や親をなくした子どもがチンピラや警察や活動家を巻き込んで起こす釜をめぐる人情喜劇が、最近ではとても貴重な16ミリフィルムによって撮影されております。あんな場所にカメラをもちこむってだけでも大変なことなのに、しかもそれをフィルムカメラでって、それはそれはえらいこっちゃと存じます、が、あらためてこの作品を見ながら私は、大げさに言うと、映画におけるドキュメンタリーとフィクションとは何ぞやともやってしまったのだった。
たとえば冒頭で赤いスカートをはいたヒロインが西成の道路から三角公園を自転車で颯爽と抜けていくところや、炊き出しを食べるおっちゃん、スリップ姿でごろごろ床に転がるセックスワーカーたち、あるいは立ち飲み屋のごちゃごちゃしてるとしかいいようのないやりとりなんかもすっごく良い!(他にも沢山ある)と胸おどったんだけど、その一方で「釜をめぐる人情喜劇」に映画が引き戻されるたびに冷静になってしまう自分がいたということなのですが。いいかえると、この映画のあちこちに現れる風景は本当に大好きだけど、中心になっている釜の物語にはいまいちノレなかったということです。
一応断っておくと、私はべつに素朴な記録映像が見たいわけではなく、現実の釜ヶ崎と、プロと素人が入り混じったキャストたちが演出されることではじめて「月夜釜合戦の釜ヶ崎」の魅力的な映像が現れてくることはわかっているつもりなのです。だけど同時に、それらの映像が、最終的には「釜をめぐる人情喜劇」としてまとめられてしまう(ように私には思えた)ことの必然性が最後まで(むしろ最後まで見ることでより)わからなかったともいえるかもしれません。まあこれは私が地元の人間過ぎるから感じただけなのかも知れませんが……。