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2.15

『花束みたいな恋をした』

佐藤蛾次郎みたいな髪型でもカッコいいってどういうことやねん!と気になり過ぎたので、土井裕泰監督『花束みたいな恋をした』を平日午後に近所(天王寺)に見に行ったらこのご時世に若者たちで大盛況で、びっくりした。結論、思ったほど蛾次郎でもなかったが、有村架純クンの髪質はコン・ヒョジンとほぼ同じという気づきがあった。
あの坂元裕二が脚本、なるほどまさに「テン年代の東京ラブストーリー〜ニッポンは貧しくなった〜」と勝手にサブタイトルつけたくなるようなお話で、ただの美しい若者たちの色恋だけじゃない、さすがに人気者が集結して作った映画はやっぱりちゃんと面白いなとかなり感心した。土井監督の安心感半端ない演出と裏腹に、不安定な主人公たちのサブカルまみれな青春(そしてその不安になるほどの薄っぺらさ)、若々しいカップルの痛々しいやりとり、長すぎた春カップルあるある、と酒飲みながら感想言いたくなるようなポイントは酒飲んだときに話したい。しかしさすがに自分の20代と重ねるような真似はしない。大人だから。
それとは別に、実はわたくし今まで坂元裕二脚本のTVドラマってあんまりちゃんと見たことないんだけど、めっちゃ勝手なイメージで、「気の利いたジョークを挟めば洗練された会話になると信じてる人たちの話」と思って(我ながら性格悪過ぎ…)ナメてたんですが、今作を見てかなり反省した。
この、一見ぺらい男女がぺらい会話をしてるだけのシーンのこれでもか!ってくらいの積み重ねで、それらの会話では具体的な問題についてはまったく触れられていないのに、ふと気がつけばその社会の何が問題なのかが見えてくるという。この映画ではざっくりと「男と女の見てる景色の違い」でしょうか(もちろん他にも格差とか地方と東京とか色々ありますけど)。おおおこれが優れた脚本ってやつかと感動しました。5年間の時間をかけてそれを語り、最終的に男と女は同じように涙を流す。でもふたりの涙は似て非なる。「結婚しよう」はダメ、ゼッタイ。
同じサブカル若者をネタにしてても『モテキ』の無邪気に男の都合でしかない呆れた映画と全然違うものなのも当然、この映画のヒットをきっかけにああいう世界が終わるといいな(この映画、架純クンが家事らしい家事をしてるシーンがひとつもないのよね。凄い)。
気の利いたジョークをバカにしつつも「おじさんの胃を半分切った話」と「魔女の宅急便実写版」には笑ってしまった。悔しい。
そしていくら菅田くんでも自己啓発本読まれたら別れを考えてしまうかも。カウリスマキをあんな表情(マジ怖かった)で見る男も無理か。ただ私なら猫の親権は裁判覚悟で戦う。