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3.01

『すばらしき世界』

久しぶりに映画を見てスーパーイライラ、それはつまらなかったからってわけではなく(いやもちろんつまらなかったんだけど)もっとはっきりした理由で「この2時間返せ」と思わずにいられなかった、西川美和監督『すばらしき世界』
映画の冒頭、刑期を終えた主人公が出所当日にもまだ判決に対して愚痴ってる姿を見て、「なるほどつまりこの男は長年服役しても自分が人を殺したということもイマイチ理解&反省してないような人間でマジで最低なヤクザ崩れのロクでもない奴なんだな」と承知。つまり本来なら同情の余地はないはずなのに、その事実を役所広司という俳優のファニーな魅力「のみ」で覆い隠し、美化してる点に「元ヤクザなめ過ぎやろ!」とブチギレたわけよ。役所広司が完璧に仕事をこなしてるってこととは全然別の話で。
なので、そのあと主人公に色々あって色々ある展開に、「ほらやっぱりただのキレやすくて感情的に暴力的で、周りの人間はみんなびっくりするほど優しくて協力的なのに自分の都合でヤクザ仲間の元に逃げてしまうようなどうしようもない男やないかい。よかったよかった」と思いながら見てたんだけど、だからこそ、だからこそや、この映画の最後にはこいつ自身が変わることにこの2時間の意味があるんじゃないの!?結局最後の最後までこいつは最低な奴って、2時間かけて「何も変わりませんでした」は酷くない!?時間返せ!と思わずにはいられなかったよのさ。
あえてヤクザが悪なら、カタギになるって、ニヒルに日常をやり過ごすことではなく、善きことをすることなはずで、だから就職先の介護施設で最低なヤツらを前にしたとき、主人公はぜっっっったいにあいつらをボコボコにしなければならなかったはずで、それが彼が出所してから支えてくれた人たちと共に過ごした時間で得たものなはずでしょうに。ドラマでしょうに。
そこでまた暴力を振るってしまっても、観客は彼が以前とは違う、正しいことをしたとわかっている、でも(映画の中の)世間は「やっぱりヤクザは恐ろしい」とか「前科者に更生なんて無理」という偏見の目を向ける、そんな現代社会をあなたはどう思いますか(間違ってますよね)と問いかけるならギリわかる。でもヘラヘラしてる役所広司を見て「社会の問題点を鋭くえぐる!」とか言われても、「はぁ?」としか思えなかったのわたし。今後観客に意味問うの一切禁止令。
だからもう長澤まさみについて考えるのとかどうでもええか…と思っていたところに、ラスト役所広司の末路にやたら動揺して錯乱状態になってる太賀を見て、「数ヶ月前に知り合ったばかりの赤の他人にそこまで感情移入できるって、こいつの今までの人生どんなけ空っぽやってん」とほとほと呆れ、でもこの映画のオチとしてはぴったりなのか…と思ったりするしかなかった。お疲れさまでした。