『ミナリ』
そして大阪のシネコンで、リー・アイザック・チョン監督『ミナリ』。80年代、農業での成功を夢見て韓国からアメリカ南部に移住してきた一家の物語。最近話題のA24とブラットピッくん率いるプランBによる製作だそうな。
ということで、冒頭ポエティックな映像やエモーショナルな音楽に合わせて写る被写体が韓国人!こういうの初めて見た!という事実にちょっと感動したのだが、つまりはテレンス・マリックの世界に韓国人って感じで、映画全体もまあ、そんな感じで、個人的には物足りなさが残りまくり(ボヤ騒ぎでとりあえずのオチってのが、こじんまりし過ぎじゃね?とか)ではあったのだが、41になってもキリスト教のこととか全然わかんないし、普段通り私の勉強不足なだけなのかもしれない。色々残念。
でもやっぱり韓国人移民家族がゼロから異国の地で必死に生き抜いていく姿には、具体的に思い出される景色もあって、ざわざわしたものも当然残った。
だから、この一家(=映画)でのお姉ちゃんの扱いが酷過ぎるってのはほんとにそうだとは思うのだが、息子がいる韓国人家族における男尊女卑ってマジガチに半端ないので、最近流行りのフェミニズム文脈で解決可能とは思わないし(だから小説『82年生まれ、キム・ジヨン』のラストはあんなだったわけやし)、今作内でのお姉ちゃんの存在感のなさにはざわざわざわわ、極めてリアルだと思った。ここで弟(病弱な、ね)ばかり優遇されるお姉ちゃんの気持ちにちょっとでも寄り添うとまったく別の映画になるってこと、監督はわかってて、この映画はこうなったんじゃないかしらん。
ユン・ヨンジャがどんなけ素晴らしい祖母であっても、当然のように男の孫にしか興味ないし、お姉ちゃんがいてもいなくてもこの映画の中の現実は多分大差はない。それはそうだろうと思う。辛いし悲しいね。
で、リー監督の次回作がハリウッド実写版『君の名は。』か。嫌な予感がしなくもない。