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11.03

『沈黙のパレード』

公開前からまあまあ楽しみにしてた西谷弘監督『沈黙のパレード』をやっと見たよ。
初っ端から、やや引くレベルで金と人をかけた無駄に豪華な町内会の仮装パレードのシーンが長々と続き、「な、なんやこれは」と困惑するも、続いての警察署内で北村一輝のやたらとリアルなゲロ描写にほっと安心。その後も一瞬しか映らない労働者の家のリアル過ぎる作り込みなど、安定の西谷クオリティではあったものの、これは原作者も言っていたけど、さすがに登場人物多過ぎで映画には不向きな内容だったのでは…。ちょっとゴチャゴチャし過ぎで、ずんの飯尾さんの芝居ももっと見たかった。ただあの人数(10人)が小さな居酒屋でそれぞれに会話しながらアクションに繋げるとか、すっごいレベルの高いことしてるなと非常に感心しましたが。
全体的に相変わらず無駄のない演出、監督は中年の男性(過去が顔の皺に出てるタイプの)にしか興味がないんだなと感じさせる渋さは堪能できたので、西谷先生には二度と恋愛モノなんかに手を出さずに、苦悩する下級層の男たちの映画だけを撮って頂きたいと思った所存。15年前のシリーズ一作目からまったく歳をとっていない福山は、これはこれでひとりだけ架空の存在って感じが出てていいんですけどね。
で、これを見たあと久しぶりに配信でシリーズ前作『真夏の方程式』(13年)を見直してみたら、その完成度に改めて驚き。リアルな島の民宿と、激渋な俳優たち(前田吟、塩見三省、白竜…)、そのマッチングがほぼ完璧。決しては派手な作品ではないけどラストには涙せずにはいられない、良質なメジャー日本映画。またこういう西谷先生が見たいけど、この地味さはもう難しいのかなあ。