『さすらいのボンボンキャンディ』
大阪ではシネヌーヴォさんでダニエル・シュミット監督『書かれた顔』(95年)&佐藤真監督『SELF AND OTHERS』(02年)を十数年ぶりに再見し、小田香監督と録音技師の菊池信之氏のトークを拝聴したり、神戸では神戸映画資料館さんで田中徳三監督『ドドンパ酔虎伝』(61年)を初体験し、山根貞男氏の講演を拝聴したりしたのだが、今はもう東京。
最終日に駆け込んだサトウトシキ監督『さすらいのボンボンキャンディ』、サトウ監督の作品見るのこれが初めてかも。
冒頭、黒霧島の一升瓶で路上飲みするヒロインの姿、それだけで「ぴえん系ストゼロストローよりかっこいい!最高!」と興奮、その後も影山祐子演じる仁絵34歳既婚の、酒を片手に街を彷徨う姿を見てるだけで満足してしまいそうなほど魅力的。渋谷のラブホテル街を中心に、見覚えのある汚い街が舞台だけど、そこに染まるでもなくそこから逃げるでもない、本当に台詞通り「ふわふわ漂う」という言葉がぴったりくる女、そりゃ風船みたいにどこに行くのか気になって観客は夢中で見てしまう。
旦那が不在中に一緒に酒が飲める(程度の共通点の)男とつい関係を持つ、ってのはかなりリアルだと思うけど、東京の人妻が不倫相手に「中で出していいよ」とか、家庭のある男がそれを真に受けるってのは、「そんな奴おるか…?」と思わなくもなかったが、彼女の言葉にはしようのない不安というかただのセフレを求めてたわけではないその後の行動や表情が切ない。でもそれを絶対に大袈裟な演技や演出で押し付けてこないのが黒霧一升瓶みたいでかっこいい(なので、彼女が色んな相手とセックスするにつれて酒の存在感が薄くなっていくのが少々残念であった)。なので、ひとりジタバタする男が情けなく見えて滑稽ね。
最終的に仁絵自身がこの体験により 反省とか成長とかしないのが良かった。彼女には幸せになってほしいよ。
大阪でも上映するみたいやけど、これは東京のラブホ街ど真ん中映画館で見れてよかった。