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1.25

『猫たちのアパートメント』

ついこないだ瓦礫の下から子猫を見つけた少女たちが大人になって、大都市ソウルの片隅から野良猫たちを助け出そうとしていたチョン・ジェウン監督最新作『猫たちのアパートメント』
「アジア最大」と呼ばれる巨大団地の老朽化と再開発による取り壊しが進む中、そこで生活していた野良猫250匹を安全な場所に移動させる人々と猫たちのドキュメンタリー。猫たちには住民がつけた名前が紹介されるのに対し、猫のために尽力しまくるボランティアたちは名前はおろか年齢も職業も一切説明されない「猫の缶切り」っぷりが素晴らしい(そして実際猫を飼っていると「本当に自分は猫の缶切りなんだな…」とちょっと切なくなることは、多々ある)。糞尿の臭いとか、大変なこともいっぱいあるやろうに。そしてここに登場するボランティさんほぼ100%女性なのね、ふーん。
とはいえやっぱり猫ですから、あんなに可愛い生き物に情が移らないわけはなく、「ワイズマンも屠殺とかじゃなく猫撮ればいいのに〜」と思いながら路上でゴロゴロしてる姿や自動カメラに反応する表情、それだけで猫が主演の無声映画でもいいよとをニヤニヤしながら鑑賞してると突然植え込みで死んだ猫を清掃員が荒く回収するシーンが現れたりして、ハッとさせられて、このバランス感覚にもデビュー作から変わらないものがあるなと思った。
舞台となる団地自体も、住民が引っ越していく姿、完全に無人になった姿、あの空撮、じわじわと死にゆく建物が怖い。
ただ、建物はまだしも、野良猫がそう簡単にいいポジションでニャンニャンしてくれるわけもなく、一体何時間カメラ回して88分の作品に編集したのか想像しただけで気が遠くなるけど(その編集技術も信じられないくらい素晴らしいんだけど)どうやらこの映画には9時間バージョンが存在するらしく、絶対そっちも見たい。ヤマガタとかでやってくれんかね。