『 SHE SAID』
原作の回顧録は未読だけど、マリア・シュラーダー監督『SHE SAIDシー・セッド その名を暴け』が大変硬派で大人な映画で、すごくよかったです。
映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタによる性的暴行を告発した2人の女性記者、彼女たちが事件を調べ始めて記事が出るまでの過程を、本当に、被害を調べて、被害女性のところにあちこち足を運んで話を聞いて、断られても諦めずに話を聞いて、子ども産んで、育てて、記事書いて、とその様を過剰にドラマティックにするわけでなく淡々としてるんだけど、でもそこで語られる内容そのものが衝撃的過ぎて、見てて怖くて震える。記者からワインスタの名前を聞いただけで涙を流す被害女性たち、その姿だけでジジイのやってきたことが伝わって辛過ぎる。
主人公の記者2人にはめちゃくちゃ家事育児そして彼女たちの仕事に理解のある夫がいるけれど、そのことに特に言及するでもなく(妻が「仕事ばっかりでごめんね」とか謝るわけもなく)どこまでもそれが自然なこととして存在するのもとても良い(2人とも幼い娘がいるということには意味があると思うけど)。お気に入りのシーンは産後鬱だった記者が職場に復帰したときの彼女のなんとも言えない喜び方。そして夫同様、すっげー優秀な上司がごく当たり前に仕事に協力してくれるニューヨーク・タイムズの職場環境よ。日本の新聞記者はこれを見て自分たちの低脳ぶりに恥ずかしさのあまり死にたくなるのかな?
こういう重めの社会派ドラマが暑苦しくなっていないのは監督も主演2人が女性ってのが大きいんだろう、演じるキャリー・マリガンとゾーイ・カザンも素晴らしかった。特に今まで童顔過ぎて苦手だったキャリー・マリガンがかっこいい老け方してて最高。良い報せに華奢なふたりが抱き合って喜ぶ姿が素敵だった。もちろん、アシュレイ・ジャッドには心の底から尊敬。