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3.04

『コンパートメントNo.6』

不勉強なものでこの監督さんのデビュー作は未見なのですが、ユホ・クオスマネン監督『コンパートメントNo.6』を見て、俄然そっちも見たくなった。サービスデーだからか、かなりの客入りでございました。
90年代のモスクワ、寝台列車に乗ってフィンランドからやって来た女一人旅に起こる奇跡…の前の、冒頭モスクワでのホームパーティー、インテリ集団の中にひとり場違いな主人公ラウル、必死に無知だとバレないように振る舞う姿に共感性羞恥で辛い気持ちに…。彼女にはこの先絶対幸せになって欲しいと願うも、恋人と思っていた女教授には無下にされ、ボロい客室ではガラの悪いロシア人労働者リョーハと乗り合わせ、散々。恋人と見る予定だった「ペトログリフ(岩面彫刻)」を見に行く、その理由をインテリが語っていた言葉を丸パクして説明するラウルに対して「見てどうするんだ?」と身も蓋もない質問をするリョーハ、彼女がカメラを盗まれたと悲しんでるとき「みんな死ねばいい」と言ってくれてて、うっかり惚れそうになった。
フィルムで撮影してるであろう画面は粗く、登場人物のビジュアルも荒い。狭い客室、汚い列車、と思ったら雪過ぎる雪の中キャッキャとはしゃぐふたり(ふたりの顔が赤鬼くらい赤かったのは寒さのせい?)。
最悪の出会いが最高の関係にと、よくあるラブストーリーのようで、その繊細さがラブの範疇を超える。ラストには恋愛映画を見たあとには感じないなんとも言えない幸福感。良き。