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3.21

『エンパイア・オブ・ライト』

既に上映回数めっちゃ減ってるけど、サム・メンデス監督『エンパイア・オブ・ライト』をちょっと前に見たのだった。なるほど確かに『フェイブルマンズ』とまったく同じセリフが出てきてた。
全体的にちょっとおセンチが過ぎるかなと思ったけど(初めて映画見るシーン、長い)期待してなかったわりにはかなり良かった。昔から年上女と年下男のラブストーリーが好きなのよ。主人公のオリヴィア・コールマンがとても素敵。
80年代初頭のイギリスの静かな街、映画館で粛々と働いている中年女性ヒラリー。そこに現れた新人バイトの黒人青年スティーヴン。でも単純な恋愛物語でも決してなく。
よくこんな役引き受けたなってくらいに最低な上司のコリン・ファース、彼女が拒否できない理由を知っていながら繰り返すセクハラ、ブチ切れて奥さんの前ですべてを暴露するヒラリーを狂人認定。メラニー・ロラン監督『社会から虐げられた女たち』(21年)にも描かれていた、女が自我を持ち出すと精神病院にブチ込む男しぐさに、「サムも勉強したんやね…」とほっこりした気持ちに。もちろん最後に出て行くのは男の方なのは当然。
そして、石川慶監督『ある男』(22年)みたいな生ぬるいレベルではなく、「ヘイトスピーチはやがて本当に人を殺すのだ」という現実をがっつり具体的に描写してたのも感心、あのシーンはかなり怖かった(セクハラ上司もさすがにレイシストではないという点に監督の優しさを感じた。あれで差別主義者やったらヤバいもんね…)。
職場の若者たちがめっちゃナチュラルにめっちゃええ奴らで、そのさりげなさや、ヒラリーとスティーブンの笑顔が語るふたりの関係、そしてスティーブンの母親とヒラリーの関係にはちょっと泣いた。