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4.06

『ロストケア』

予告を見て、なるほど高齢者を殺したサイコの話かと思い、安楽死絶対反対派の私はだいぶ警戒して見に行ったらまったく予想と違った前田哲監督『ロストケア』。絶対オススメ!とは間違っても言えないが、見た方がいいとは思うよ。
介護センターで働く善良な職員マツケンが実はこっそり重度認知症の高齢者を40人以上殺していた。それを「救い」と主張する彼を、同じく介護を必要とする障害者を殺した植松容疑者や「集団自決」とほざく奴らとは違う、むしろ真逆の存在なのだと伝えるために、かなり勉強して考えてめちゃくちゃ気を配っている脚本とセリフひとつひとつに大変感心(「集団自決」を支持するような露悪キャラが一切出てこないのもすごくよい)。真面目な人たちが真剣に作ったんだなあ、と。
老人介護、絶対いつか(いや既に、か)自分にも訪れる問題だと頭でわかっていても、映像で見せられるときついしんどい辛い苦しい重い怖い。マツケンが追い詰められていく様はホラー。でもだから考えないといけない、と見てて改めて思う。日本映画柄本明に頼り過ぎ問題があるとしてもこの柄本明はちょっとヤバかった。
正直、演出が冴えてるとかいう訳ではなくむしろちょいダサ(面会シーンいくらなんでも反射させ過ぎワロタ)だけど、この映画はそれでいいんだと思えるし、マツケンの真っ当過ぎる主張と対峙する検察長澤まさみたん、ふたりの取り調べシーンの緊張感は良かった。まさみたんも一切エロ要素のない誠実な芝居が出来て嬉しかったんじゃなかろうか。
で、ラスト、老人介護という問題について、「あなたはどう思うか」的な是枝裕和や西川美和のクソ映画みたいなクソ問いかけ系にはせず、マツケンの涙を流す姿で、はっきりと「老人を殺したのは誰なのか」「穴を作ったのは誰なのか」というミステリーに対する答え、犯人を提示しているのに、そこまでするならもっと思いっきり名指ししてやってもいいんじゃないの!やったれや!!と鼻息荒くなってしまったが、まあでもそれはみんなわかるよね。選挙行こうね。