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6.10

『怪物』

脚本家は好きな人でも、監督&プロデューサー&キャメラマンが嫌いな映画が面白いわけもなく、是枝裕和監督『怪物』はつまらない、というか、御本人はキネ旬のインタビューで「是枝ワールドと言われるのが鳥肌が立つほど嫌い」とおっしゃっていたけれど、今作もまごうことなき是枝ワールドな映画で、相変わらず「雰囲気」と「問いかけ」に終始しておられました。わかってたけど見にいく私を誰か褒めて。
この映画の問題は複数あるけど既に幾つか忘れたので覚えてるものを挙げていくと、とりあえず三部構成が全然上手くいってない、一部(親の視点)と二部(教師の視点)の差がタチ悪いよ。二部の瑛太可哀想過ぎるやろ。
で、そうして視点を変えることで、性的マイノリティ(この場合2人の少年)を取り巻く社会(大人)の無理解や偏見を浮かび上がらせたとて、その問題ってとっくに現実世界で「社会はどうあるべきか」って答えが出てると思うんだけど…。でもそこは第三部(子どもの視点)で大人の行動も子どもの選択も具体的には示さず、キラキララストでぼんやり終わるあたりがゾクゾクするほどの是枝っぷりだが、ネットでのみなさんの感想を少しチェックすると、マジで9割の観客が「言葉にならない感動」「動けないほどの衝撃」「考えさせられた」的な感想を書いていて、「それは単にお前らが普段から社会問題について考えてなさ過ぎるただのアホなだけじゃないか?」としか思えないんだけど、そういう観客に向かって「自問させる=内省させる=魂のステージが上がった気にさせる」、それが是枝ワールドの正体な気がする、なので今回も大成功。名付けて自己啓発系社会派映画(©️夫)はどうでしょうか。
でで、この映画がカンヌでクィア・パルム賞を獲ったとのこと、しかし監督は(受賞する前に)「性的マイノリティに特化ではなく誰にでもある少年の葛藤の物語」とコメントしてるそうで、まあ言いたいことはわからなくはないが、でもこれは同性同士でなければそもそも成り立たない話なのにそのコメントは狡いんでないかい。それにこの映画に登場する少年ふたり、めちゃくちゃ美形で可愛くて、ふたりきりのシーンはキラキラ美しく撮られていて、Twitterにも「ショタコン必見」のコメントがあったが、その辺りでもまあまあアウトなことやってると思うよ。もちろん田中裕子の使い方も超アウトね。野呂ちゃんだけが良かった。