『王国(あるいはその家について)』
実はもう何年前か思い出せないくらい前に一度試写で見せてもらっていたんですが、そのときは「なんかけったいなもん見たな…」とぼんやり思ったくらいであまり深く考えず(まあ小難しいことは他の誰かが言うだろうし…)そのまま時間は経っていった。怠惰でごめん。
がしかし、この度めでたく劇場公開するというので久しぶりに見直したく、ポレポレ東中野さんに草野なつか監督『王国(あるいはその家について)』を。トークイベントがあるとはいえ満員御礼で凄い熱気。
冒頭、どうやら殺人を犯したらしい若い女性と調書を取る刑事が部屋にふたり向かい合って事件について話してる。それに続きその事件の経緯や詳細が彼女の地元に設定されたらしい殺風景なリハーサル風景が彼女の親友役と親友の夫役の3人で延々と展開される。ほんと延々と…。
繰り返される同じシーン、同じセリフ、と書くとうんざりしそうだけど、毎回微妙に役者さんの表情が違ったり話し方が違ったりするのが面白くて飽きることはない、と書いてもどんな映画かってことはほとんど伝わらないのでこれは実際映画館で体験してもらうしかない作品だと思うので興味を持った方は是非に。
個人的には繰り返しシーンよりもある一連の流れを3人のセリフだけで長く見せる(風景描写はスタッフが言葉で説明する)ところが非常にスリリングで面白かった。何気ない会話かと思いきや見てるうちにどんどんヤバい空気になっていく、でも私はセリフを言ってる役者さんを見てるだけなのになんだこれは、とまんまと混乱(いや数年前何見ててんお前って話ですが…)。
そして最後また冒頭の彼女が自分の家らしき場所で自分で書いた事件についての手紙を朗読する。そこで語られる「王国」、私はそこにちょっと引っかかるものを感じなくもなかったのだが、それも見る人によって全然違うんだろう。何が正解かまったくわからない、不思議体験な150分。家で見るタイプの映画では絶対ないと思うので、この機会に是非。