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1.14

『彼方のうた』

若者の街渋谷の映画館に行ったのに客の大半が白髪おじいだったのは何故なのか、杉田協士監督『彼方のうた』
内容はと聞かれても非常に難しい、『ひとつの歌』(11年)『ひかりの歌』(19年)『春原さんのうた』(21年)から続く、(場所も役者も違うけれど)その続編というか、パンフレットで筒井武文さんも書かれていたが、大きな映画の一部のような。見てる側には設定も状況も説明されぬまま主人公の日常が勝手に始まっている映画。私は過去の三作も見てるから、なんとな〜〜〜く「主人公は理由があってこういうことをしてるんだろうな」と推測しながら見たけど、それが正解なのかはわからんし、初めてこの作品を見た人は本当になんのこっちゃわからんと思う。でもそういう風に撮られてるんだから、そういう風に見るしかない。見ましょう。
中盤、主人公が東京の日常から一転、その関係性もはっきりはわからない女性とミニバイク二人乗りで上田に行った瞬間、そこで何かが起こってしまいそうな不穏な空気が映画に漂い出して、一見何も起こらない系ゆるふわ映画と見せかけて(いや実際上田でも特に事件は起こらないんだけど… )、大きな映画には決して柔らかいものだけが歌われているのではないことを思い出したりした。死とか喪失とか、カッチカチやんね。あの、ほんまにどこの誰かまったくわからない女、という役柄を映画の中に存在させた中村優子さんも凄いよな。
もちろん杉田映画の登場人物はどこまでもお上品なのでガツガツしない、昼ごはんも少ない。パンとオムレツじゃあ腹は持たんしワイン飲ませろとは言わない言わない。