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1.20

『PERFECT DAYS』

さすがにベンダースはないわ、ヴィム・ヴェンダース監督『PERFECT DAYS』、新作はえらい久しぶりのような。
役所広司がオシャレトイレの掃除をしてる映画ってくらいの情報しか持たなかったのですが、確かに役所広司がオシャレトイレの掃除をしてただけなのに、えらい良かった。役所広司も映画も。
個人的に一番アガったのは、何もない部屋で来る日も来る日も同じ日常を繰り返す清掃員の平山は、悟りを開いた世捨て人でもなんでもなく、ただのむっつりスケベおっさんだという現実を隠してないところでしょうか。役所演じる平山の生活は若い女子の存在によって変化が起こりがちだけど、ヴェンダースはその女性たちを「自主的におっさんに惹かれる若い女」(=おっさんの妄想)としてではなく、「女の存在によって浮かれまくるおっさん」として描いているのがさすがと感心。ほっぺにチューされたくらいで夢に見るほど喜んで、スナックの美人ママの前では無害インテリ装ってたくせに内心下心ありありだった(←一番ウザいタイプ)とかさ。全然笠智衆じゃなくてワロタ。
それでも、無言のハグと涙だけでうっかり泣かされるんだから、役所広司って凄いなと改めて。
しかし、スポンサーのユニクロや電通とかの「カネかけて有名建築家に造らせたトイレを有名な監督に撮らせる」って自分たちの期待を裏切って、オシャレトイレをカッコよく撮るわけでなく、極めて平凡な清掃員にスポットを当てた映画なんか作られて逆に怒ってんじゃないの。そいつらのダサい発想より、平山がカセットテープで聴いてる音楽の方が何倍も豊か。日本の金持ちバカ過ぎて泣ける。
これは大阪ナンバの、周囲にパチ屋しかないような映画館で見たんですけど、東京に住んでても見たことないようなイケてる場所にあるイケてる公衆トイレ、大阪で見るとよりその空々しさが際立ってよかったです。