3.29
『コット、はじまりの夏』
大阪で見ようと思っていたらあっという間に上映終了してて悲しかった映画が東京では上映を延長してくれるって言うんだからやっぱり都会は素晴らしいとしみじみ、コルム・バレード監督『コット、はじまりの夏』をようやく。
9歳の少女が主人公と聞くと、子どもの無垢な姿や行動でこっちを揺さぶるのかと思いがちだが、想像以上のドライさでちょっと驚いた。がドライなのにグッとくる、静かに良い映画だった。コットちゃんの顔が子どもらしくないのがいい。
舞台は80年のアイルランド、大家族の中でひとり寡黙なコットちゃんは夏休みの間農場を営む親戚夫婦の家に預けられる、そのひと夏の些細な経験。実の父親がかなりウザめ。
陽も当たらず薄汚れた自宅のキッチンから、簡素だけど明るくて、そこに住む親戚夫婦が普段から丁寧に暮らしてるのがわかる家。そこでも寡黙なコットちゃんを優しく見守るおばさんと、無関心に見えるおじさん。その3人が徐々にお互い心を開いて、静かだけどしっかりと関係を築いていく様をこちらも息を呑んで見守る気分に。髪をといてくれたり、洋服を買ってくれたり、その様子をほっこり眺めてたら突然乱暴な編集だったり。何なんだあれは。
自分を大切にしてくれる他人の存在を初めて知った少女、号泣したり叫んだとり余計なことをしなくてもコットちゃんが走るだけで映画は十分なんだわ…と感動しながら観賞後ロビーに貼ってある雑誌の批評記事を幾つか読んでみたら、なんでかこの映画と『哀れなるものたち』を一緒に語る奴らが何人かいてて(女性の成長物語的なことで)、マジで有り得ない、どんな見方したらそんな風に感じれんねんコットに謝れ。