BLOG

4.03

『ルート29』

森井勇佑監督『こちらあみ子』(22年)は周りですごく評判が良かったのになんでか劇場で見逃して、私にしては超珍しく配信で見たのでした。TV画面でも伝わる、あみ子演じる大沢一菜の魅力に思いっきりやられた(そのあとDisney+でクドカンの「季節のない街」にハマったのに、まっっったく彼女に気づかなかった!子どもの成長は恐ろしい)。
その森井監督の最新作『ルート29』を試写で拝見。綾瀬はるか演じる清掃員トンボが風変わりな少女ハル(大沢一菜)を連れて旅に出るロードムービー。その旅の途中で奇妙な人たちと出会ったり、家族と久しぶりの再会をしたりする中でトンボとハルの繋がりが深まったり、それまで周囲に興味のなさそうだったハルの心に変化が現れたりする優しくて可愛らしくて変な物語。変さはあみ子より一歩進んだ感じでしょうか。
その奇妙な人たちが、生きてんだか死んでんだかわからないおじいさんだったり、嘘なんだかほんとなんだかわからない犬おばさんだったり、それぞれ十分強烈なんだけど、何気に見ながら一番印象的だったのは、旅の舞台姫路から鳥取を結ぶ国道29号線を歩くふたり、そのふたりがいる自然の風景。真っ青な空と、木の緑の鮮やかさや森の生々しさと壮大さに対して、映画はあくまでトンボとハルという小さな世界の物語。その、そこで語られていることとそこに映っているもののギャップが、このふたりが決して自分たちだけの場所にいるのではなく彼女たちの世界は大きく開かれているのだと言っているようで、すごく良かった。あんな場所での撮影めちゃくちゃ大変そうやけど。
冒頭からシンプルなシーンに響き渡るゴージャスなBialystocksのピアノがマジ最高。これでもかっくらいに飯岡幸子カメラマンの横移動が見れて満足。
普段TVで見る姿とは全っ然違う綾瀬はるか、全編ほぼ同じ衣装で無表情でボソボソ喋って、それでも十分いいんだからやっぱり人気者は偉大だ。手足がひょろひょろ伸びてすっかり成長したけれどまだこの年頃(12歳)独特の中性的な魅力爆発の大沢一菜も相変わらず素晴らしく。
誰かの妄想のようでもあり、誰かの本当でもあるような、そういう感触も含めての大人のファンタジー映画。秋には全国公開だそうなので、みなさん是非劇場であのふたりとあの大自然とあのピアノを体験しにいきましょう。