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4.10

『アイアンクロー』

我が人生で一度もプロレスに興味を持ったことがないので、ジョーン・ダーキン監督『アイアンクロー』を見るまでエリック一家のことも「アイアンクロー」のこともまったく知らず、映画の中で次々と起こる事件に「んなアホな、さすがに死に過ぎ」と思ってたけど、まさかこれが本当に事実だとは…。
プロレスのヒール役だった父親が、自分の息子たち(長男は幼い頃に死亡、弟たち3人兄弟)をプロレスラーに育て上げようとする物語。そう、育て上げようとしただけなんだけどね。辛いね。
とにかくこの兄弟が超仲良し、みんなで切磋琢磨して父親の指導に従って体を鍛え、ホットパンツ履いて頑張る。夜中に家を抜け出して末っ子のバンドのライブを見に行ってはしゃいだり、長男代わりの次男の結婚式でみんなで踊ったり、兄弟たちが楽しそうなシーンがとても良い。
と同時に、映画全体にだんだんじわじわ不穏な空気が流れ出しす。しかしその不穏なものの正体を決してセリフで説明せず、ゆっくりじっくり時間をかけて彼らの日常に浸食してくる表現が見事だし、見てるこちらは真綿で首を絞められてるような苦しさ、マジでしんどかった。「毒親」「有害な男らしさ」「機能不全の家族」と片づけるのは簡単だけど、そうであってそうじゃない、ある意味これが家族というものの正体なんじゃなかろうか。そうじゃないからめんどくせえのよ。
弟1が日本で死に、弟2が自殺し、弟3も自殺(一番不憫…)。変わらない父親、何気にヤバい母親、残された兄。ようやく感情が爆発したとき、弟たちは天国で幸せそうで、それでも妻と「家族」を作ることを諦めなかった現実に涙。最後の写真、さすがに赤ちゃんの飛距離びびったけど。
お久しぶりのザック・エフロン、レスラーの役とはいえマッチョ過ぎて最初別人かと思た。妻役のリリー・ジェームスも良かったね、さすがアメリカ、手狭なマンションで大型犬2匹いくのか…と文化の違いも勉強になりました。とにかく疲れたけど、良い映画だった。