5.02
『青春』
ワン・ビン監督の『青春』。タイトルがいいよね、「青春」。わたしゃ昔から青春映画に弱くてね。『キッズリターン』とか『ミレニアム・マンボ』とか『スケート・キッチン』とか『オルエットの方へ』とかさ。だからすっごく楽しみにしてたワン・ビンの最新作が最高におもしろい青春映画で、大満足でございました。
中国は上海を中心に広がる長江デルタ地域、そこにある織里という町の衣料品工場で働く若者たちの労働と日常を映すドキュメンタリー。215分間ほんまに労働と日常しか映ってないけど、まったく飽きない。内容的には一応9つのエピソードにわかれている。
にわかには信じがたいほどのスピードでミシンをかけながら、友だちと雑談したりじゃれ合ったり。刑務所の方が清潔なんじゃないかと思える衛生状態の寮で、顔をケーキまみれにして爆笑したり恋バナしたり。一見劣悪な環境の中でたくましく生きてる若者の姿に見えるけど、ほんの些細なことをきっかけに、いきなり暴力が発生する瞬間に走る緊張感がえぐい。突然暴れ出す彼(母親に制止される)は常にタバコをくわえていて、製作中の商品に灰落ちたらどうすんの…とか布だらけの場所で火事起こったらどうすんの…とかなりヒヤヒヤしながら見てたけど、それでも吸わなきゃいけないときもある。喫煙家の私にはわかるよ…。
妊娠した女の子、モテたい男の子、賃上げを訴える、愛をささやく、スマホをいじる、爆音で流れる歌謡曲。カメラに映る若者たちはカメラの存在を感じさせない自由さで青春を生きている。眼の前にある爆速ミシンと汚部屋もその瞬間には青春。やっぱり良いタイトルだ。