5.30
『ソイレント・グリーン』
映画は映画館で見る派なんて言ってるとほとんど見る機会のない監督ってのがいっぱいいまして、こんな風に単発で上映してくれるのは大変ありがたい、リチャード・フライシャー監督『ソイレント・グリーン デジタル・リマスター版』(73年)。劇場ロビーにプラスチックでできた緑色の正方形のカードみたいなのがいっぱいあったけど、見る前は意味がわからず…。
時は2022年、人口過密によりスラム化したNYの街、道に横たわる仕事も家も失った人々は配給される究極の栄養食「ソイレント・グリーン」の配給を待ちわびている…。という超ディストピアの中、ソイレント社の社長が自宅で殺された事件を追う刑事・ソーンがひとりスラム街と経営陣が暮らす高級アパートを行ったり来たり、その絶望的な格差を目の当たりにしつつ、「ソイレント・グリーン」の恐るべき真実をついに暴く…その真実は途中でなんとなく想像がついたけど、それよりも金持ちのアパートで若い美女たちが「家具」として扱われてることの方がディストピアのようで2024年のリアルと一緒やし…と震えたり、親友の安楽死を見届けるという選択肢に震えたり、人間がポイポイ捨てられることよりも地味な感触がゾワゾワ怖かった。
でも、スクリーン越しにも体臭が伝わってきそうなチャールトン・ヘストンの、正義感があるんだかないんだか、熱いシャワーの誘惑には負けるし、当然のように美女を抱くし、レタスは旨そうに食べるし、人間がモノ扱いされる世界でめちゃくちゃ人間っぽい姿が妙にチャーミングで笑えたのが救い。
しかしこれを24年に見る我々、全体的にまったく笑えない。高級アパート希望。