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9.12

『Mommy マミー』

これは誕生日に見に行ったから覚えてる(悪趣味)、二村真弘監督『マミー』
98年の夏、和歌山の小さな村の夏祭りで起こった毒入りカレー事件で犯人とされ、死刑判決を受けた林真須美。当時19歳だった私は今でもはっきりとあの報道陣に水をかける映像やミキハウスのTシャツを覚えている。あの事件を、息子の「母」としての林真須美の記憶と、当時の目撃証言や科学鑑定への反証、さらには共に保険金詐欺を働き自らもその被害者とされる夫・健治の告白から、最高裁判決に異議を唱えるドキュメンタリー。
個人的には、死刑判決を受けた頃から「明確な有罪の根拠もないのに、推定無罪が機能してない間違った判決やろ」くらいには思っていたのだが、この映画を見て、ここまで警察やマスコミが適当ぶっこいてたんかとマジでびびった。あの理科大の教授とか目ヤバかったし。
有罪の証拠とされてる近所の子どもの目撃証言やヒ素を特定する科学者たちの言葉に、さすがに「こ、これはもしかしてもしかするのかもしれない」と思ってしまう。危険だとはわかってるけれど。このゾワゾワ感を体感するために、是非見てほしい。
母を信じてほぼ顔出しの息子、温かい家族の記憶を落ち着いて語る姿は、死刑囚の息子として本当にすごい勇気であろう。そして一切事件について語らない、語りたがらない近所の人たち。しんどい
ただ、息子やかつての居候、ジャーナリスト、監督などの話もそこそこに、夫の健治が強烈というか諸悪の根源はこいつな気がするぞ。劇中でも年老いて動けないわりにはめちゃくちゃ饒舌にかつての保険金詐欺についてペラペラ話す話す。楽してカネを儲けるためには大概のことは罪とは思わず、博打のためなら義母の保険金も勝手に使う、その返金のために保険金目当てで自分で自分のお茶にヒ素を入れて死にかけるも、死んでないからオッケー、みたいな田舎の最低チンピラ野郎。その性格は妻がこんなことになったあとも変化があった気配なしで、なんだかなあ。お前がもっと頑張ることもできたんちゃうのとも思うけれど、息子はそんな父親にも優しいのな。
林家の羽ぶりが良かったときの様子とか手に取るようにわかるし(既視感)、そしてこれくらいの成金小金持ちが母親のことを「マミー」と呼ぶのもめっちゃわかる。あと、父親の子分みたいな居候もなんかわかる。そない特別な家族でもない。
二村監督のTV作品などは見たことないけど、突撃インタビューの様子や勢い余って自分が逮捕される様子を見てるとなかなか根性のある監督さんだとお見受けしたので、これからもガンガン攻めてほしい。