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9.26

『ナミビアの砂漠』

阪本順治監督『冬薔薇』(22年)で「お、この娘いいじゃない」と思った河合優実クン、そのあとあっという間にお茶の間の人気者になり、「私の目に狂いなし、良き良き」と勝手に満足していたけれど、山中瑤子監督『ナミビアの砂漠』を見て、ここまで凄い女優だったとは!と非常に強い衝撃を受け中。もちろんこんな映画を作った山中監督にも感動中。久しぶりに映画見ておもしろくて痺れ中。
2020年代を生きる二十代の東京の女の子、カナ。前半(タイトルが出るまで)は、その無気力で最低な日常に共感性羞恥(ハズカシ)で45歳胸いっぱい、既視感の連続で動揺すること多々あり若いってほんと馬鹿ですよねあの頃のホンダたちごめんなさいの気持ちでヘラヘラしながら見れたのだが、後半になりカナの様子が徐々に変化していって、誰のものかもわからない胎内のエコー写真を同棲相手のハヤシに突きつけたあたりからは、真顔で鑑賞。明らかに過激化する暴力、暴言、自分でも止められない激情に苦しむ様は、ほんまにカサヴェテスの映画を見ているときのような緊張感と疲労感、早くこの映画から解放されたいと思うほどの迫力。河合優実のひょろひょろと長い手足がそれを増長する。
そんなカナと永久に生え続ける永久脱毛を施術するカナのバランスはもちろん壊れていくのだけれど、でもそれが当たり前だということは、「女が妊娠して中絶手術を受けるまたは流産する」ことを、男がそれを「忘れてた」とつぶやく、そんな世界でハタチそこそこの若い女が正常でいられるはずがなく(飲む中絶薬も未だ認可されない社会で!)、そしてそれを軽はずみな嘘として吐いてしまった自分と吐いてから自分の最低さに気づいたかのように涙する自分はもうわけがわからなく、見知らぬ女を妊娠させた男に対し自分がその女になり変わってこれが罰だと言わんばかりに暴力をふるいながら、カナ自身がこわれていく様は、いやあ、カナの気持ちなんて1ミリもわからないけど、本当に素晴らしかったです。
それに続く展開も、イマドキの女の子であるカナちゃんは自ら治療を受けることを選択する聡明さで、しかしそこでもリモート越しの男性精神科医のやる気のなさはもはや笑うしかなく、でも隣人とカウンセラーのか細い声がかろうじて彼女を繋ぎ止め、母親からの、何を言ってるはわからないがやかましく響く電話越しの声がまたドラマティックでかっこいいから見て。
今まで「なんで映画監督って男のくせに若い女を主人公にしたがるんやろ」と疑問に思ってたけど(その答えは知っていたけど)、これからはちょっとは減るかなと想像するだけでこの映画は偉大だ。
余談、好きぴと付き合うことになってテンション上がって街中でイチャイチャしたり鼻ピ入れたりタトゥー入れたりするのはまあ微笑ましく見てたんですけど、若者の行動として衝撃的に理解不能だっったのは、2020年代の女子ってあんなカジュアルにホストクラブ行くもんなの!?大丈夫なのそれ!?おばちゃん心配よ…。