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12.12

『春をかさねて』『あなたの瞳に話せたら』

96年生まれ宮城県石巻市出身の佐藤そのみ監督が2019年に大学の友人や地元の友だちの協力を得て石巻市大川地区で撮影したとうふたつの映画、『春をかさねて』『あなたの瞳に話せたら』(19年)を鑑賞。びっくりするくらい良かった。
個人的に今まで作られてきた所謂「震災映画」に対してはかなり懐疑的で、「震災に遭ったからってそのトラウマから人を殺したり売春したり大声で叫んだり、そんな奴おらんやろ〜」と納得できず、そういうの全部まとめて「妄想系震災映画」と呼んでたんだけど、この佐藤監督の二作の前には静かに圧倒されるしかなかった。
震災で妹を亡くした14歳の優等生の主人公とおしゃまな友人。ふたりとも同じ傷を持ちながら、その年齢ならではのふたりの違い。お互いへの些細な違和感。「そうか、震災で妹を亡くしても思春期の女の子は思春期の女の子か」と当たり前のことに気付き、残酷なまでの若さに愕然とするもふたりを演じる役者さんの瑞々しさに救われる。
距離のできたふたりが改めて津波被害に遭った石巻市立大川小学校で再開し、校内を廻りながらぽつぽつと他愛のない話をする姿が、妄想の被災者ではなく、そこに生まれてこれからもそこで生きていく十代の女の子たちで、こんな映画は今まで見たことがない。凄い。
『あなたの瞳に話せたら』は、東日本大震災で石巻市立大川小学校を襲った津波に妹さんを奪われた監督が、その妹さんへ宛てた手紙を朗読、さらに同じく大川小学校で友人や家族を失ったふたりの友人が個人に宛てた手紙とおふたりの現在の姿が映される。特に凝った演出があるわけでなく極めてシンプルなドキュメンタリーながら、辛い過去を抱えながら2019年の日常を生きている。スタジオアリス的な仕事場と近所のバーを行き来するお姉ちゃん、良かったなあ。被災者である監督自身が被災者を撮る側になることへの覚悟に感動するしかない。喪失感とか言うてる場合か。
この二本は絶対二本まとめて見た方がいいでしょう。一本だけでも十分素晴らしいけど、まとめた方がその凄さがわかると思う。今作が妄想系でないのはもちろん監督自身が震災被害の当事者だからというのが大きいけれど、それでもここまで勇敢な映画もなかなかないと思う。
フィクションもドキュメンタリーもやたらと演出が上手くて、これは上映中劇場に駆けつけることを強くオススメ。妄想系派の人も絶対見た方がいい。