『ディックス!!ザ・ミュージカル』
お、大好きなラリー・チャールズ監督の新作!と喜んで、『ディックス!!ザ・ミュージカル』。いや好きとはいえ
『オレの獲物はビンラディン』(16年)は爆笑したものの配信で見た『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(06年)はさすがの私も笑っていいのか0.5秒は悩む過激な風刺ネタの連続だったので今回も覚悟していたのだが(ボブ・ディラン主演のデビュー作は未見)、さすがにみんな大好きA24初のミュージカルということで、しっかり下品でポップでクリーチャーな愛に満ちた作品だった。満足。主演のふたりは元となった舞台の原作者、本当はゲイなのに劇中ではストレートを演じる勇気あるLGBTQ。
大金を稼ぎデカチンなことが自慢のいけすかないふたりの青年(っていうほど稼いでないのがオモロい)が実は生き別れの双子なことが判明、ひとり親家族は本当の家族じゃないと考えるふたりはお互いの親を再婚させて完璧な家族になろうと共謀するのだが…、という結構古典的な物語(最終的にはこの双子同士でめちゃくちゃハードにセックスするんですけど)。お話を進めるのはハードゲイ風アジア人の神様。
とにかく悲惨で下品な下ネタやバカ丸出しのセリフがめちゃくちゃ本格的なミュージカル仕様で歌い上げられ完璧なダンスで魅せられ、ミーガンのパフォーマンスは最高にカッコよく、こういう映画見るとなんやかんやでやっぱアメリカってすごいなーってしみじみ思ってしまう。クレジットで流れるNG集の現場の雰囲気も良さげで、みんなで協力するって素晴らしいですね。
なんで父親(ネイサン・レーン)がクリーチャーに夢中なのか、なんで母親(メーガン・ムラーリー)のヴァギナはバッグの中なのか、下水道ボーイズはほんまに何者なのか、私の拙い頭では理解しきれないところもあったけれど、最終的には神様もゲイもノンケもシスターもテキサス野郎もみんな一緒に「ALL LOVE IS LOVE!GOD IS FAGGOT!」とゴスペル風に歌い上げ、羽の生えたヴァギナが自由に空を飛び込び、大円団でめでたしめでたし。