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3.07

『あの歌を憶えている』

『あの歌を憶えている』ミシェル・フランコ監督、私とタメのメキシコ人監督のことを全然存じ上げず今作が初鑑賞。若年性認知症を患う男とヘビーなトラウマを抱える元アル中の女の、ちょっと変わった大人の恋愛映画でしょうか。いいタイトルやなと思ってたら原題は『MEMORY』、なるほどなくしたくない記憶と消したいけど消えない記憶の物語。
とにかく主演のふたりを演じる役者が良くって、ジェシカ・チャステインはもちろん、今までは上目遣い気味のにやけ顔が苦手だったはずのピーター・サースガードがここでは禿げ上がって太っているのになんとも言えない魅力に満ちて、このふたりの距離が淡々と近づいていく様が微笑ましくて良かった。キスするタイミングは萌えた。
ジェシカ・チャステインが自らのトラウマのせいで年頃の娘にめっちゃ厳しくて、その娘もやたらと物分かりがいいことがちょっと気になったけど、そりゃあんなトラウマ抱えてたらしょうがないか…と理解しつつ、これって親からも同級生からもレイプされてたってこと?もしそうならそこまで不幸な必要あるかな…と思ったりもした。
ピーター・サースガードも病気のせいで兄弟に酷い扱いを受けるけど、若年性認知症の症状の描写が少なくて、イマイチ何が問題かわからんな…と思っていたら監督のインタビューで「具体的には調べてない(直感ベース)」と話していて、そこは調べてくれよ…と思ったりもした。
でもあの母親への怒りをぶち撒けるシーンは見ながら胸が痛くて痛くて。ほんまにこういう母親(死んでも自分の非を認めない)の姿って幾つになっても冷静に見られない。それでも否定される娘としてのジェシカへの同情で泣いた。辛。
と書くと色んなネタがてんこ盛り映画みたいやけど、映画自体は非常に静かで、ただこのふたりを見守るしかない距離感で、このふたりには幸せになってほしいなあとぼんやり沁みる映画でございました。