BLOG

3.14

『ピアニストを待ちながら』

見よう見ようと思っていたのに公開からだいぶ経ってしまったけれどこんな私のために目黒シネマさんありがとうと、七里圭監督『ピアニストを待ちながら』。ベケットの戯曲はよう知りまへん。
「世界的建築家・隈研吾が手がけた村上春樹ライブラリー」ってのが早稲田大学に出来たというニュースはちらっと耳にしたことがあったけど、その建物を舞台に繰り広げられる男女5人の夜のお話。
照明もつけず暗い室内に伸びる影、タイトルのせいか光と影のピアノの鍵盤みたく見える階段、隈研吾の建築が異様にかっこよく見る映画のミラクル。どうやらそこから出られない登場人物たちが暇つぶしのように始める演劇のリハーサルは軽やかなピアノのリズムと可愛らしいダンスで一見ポップに見えるけど、閉じ込められた場所で明けない夜を過ごしながら来ないピアニストを待つ、結構絶望的な状況。自動ドアはすぐに開くのに外に出れない、確かにいつか体験したような世界。
意味があるのかないのかわからない台詞と演劇の一部なのかそうでないのかわからない会話がぼーっとしてたら置いていかれそうになる編集、気を抜いたら何が起こっているのか見逃してしまいそうな、久しぶりに真面目に緊張しながらスクリーンを見た60分であった。真夜中の図書館という閉塞感と自由が両立するような場所で死者と生者が絡み合う世界を唾ぐ目眩のような時間の映画、スリリングでミステリーで大変面白かった。
上映後の七里監督と岡田利規さんのトークも、噛み合ってるのか合ってないのか絶妙な展開で面白かったです…。