『Flow』
祝本家アカデミー賞長編アニメーション賞に、ギンツ・ジルバロディアス監督『Flow』を見てみた。ラトビア発のアニメーション。見事なCGアニメーションのわりにエンドロールが短いなと思ったら、この映画は全編オープンソースソフトウェアで作られてるそうで、小規模低予算ってのも注目のひとつだそうです(オープンソースなことの何が凄いかわかってない観客)。
かつては人間が存在したであろう荒廃した世界のどこか、気候変動か災害か、大洪水に見舞われた街から1匹の黒猫が流れてきたボートに乗り込み、一緒に乗り合わせた他の動物たちと様々な危機を体験していく冒険物語。
主に登場する動物は猫・犬・カピパラ・キツネザル・白デカ鳥(ベビクイワシ)。これらの動物たちは言葉を話さず擬人化されてないキャラクター、だけど、まあ動物の耳や目やしっぽの動きなんかから人間は勝手に彼らの気持ちや感情を想像してしまうもので。そうやって見ると結構饒舌な子たち。
主役の黒猫ちゃんはまだ幼さの残る大きさ、この子が意を決して飼い主に愛されて過ごしたであろう家を飛び出し船に乗って見知らぬ場所を目指す。その道中の幻想的な映像、特に水や森の自然は本当に圧倒的で怖いくらい(洪水のシーンは『ヒアアフター』ばりにリアルなので見る人によっては要注意かと)。そんな壮大な世界を相手にあの手この手で負けないようにもがく黒猫ちゃんはもちろんたまらなく可愛くて萌え萌えで見てて飽きないし、やっぱりアニメでしか表現できない動物目線の躍動感にはワクワク、アニメならではの幻想的なシーンにはうっとり。様々な災難にあう動物たちをハラハラしながら見守ったが、映像の凄さと裏腹に語られてるであろう物語がちょっと単純過ぎた感あり。異種間で気持ちを通わせ新しい世界に立ち向かう、そこ止まりなのは弱いと感じてしまった。もちろん美しいけれど。
あの猫王国みたいな家を作って見事なデッサンを描いていた黒猫の飼い主さん、旅の途中で一度くらい思い出してあげて欲しかったけど、猫はそんなことしないか…。