『ドマーニ!愛のことづて』
もう見たのは結構前になるのだけれど、パオラ・コルテッレージ監督『ドマーニ!』が大変面白かった。『アノーラ』より好きよ。
イタリアで超人気のコメディエンヌが監督主演を務めた本作はイタリア本国で空前の大ヒットを記録したそうで、イタリアも色々問題がありつつもこんな映画に客が駆けつけるなんて大変羨ましい。日本人も見ろよ。
戦勝直後のイタリアはローマの半地下住宅に住む主婦デリア。夫は「さす九」もびっくりの家父長制全開の男尊女卑野郎、妻や娘を見下しDVは当たり前。舅の介護もいくつもの仕事も掛け持ちしながら家事もこなす多忙な日々ながら夫に馬鹿にされいつもボロ着の母の姿を娘は軽蔑する始末…、と書くとものすごく悲壮感漂う映画みたいだけれど(モノクロだし)、これは監督がコメディエンヌだからか、なんだか映画全体に暗さはゼロ(この映画に大九明子監督がコメントを書いてるのは超納得)。DVシーンの描写は軽やかで、笑えるシーンもあるものの、それでもデリアが普通に生活している=男に虐げられてる姿は十分に見ててしんどい。
そんな中で、米兵との超意外な交流(爆笑した、このセンス最高)や市場で働く女友だちとの友情、好意を寄せてくれる自動車工などぽつぽつとほっこりする些細なことたちはあるけれど、やっぱり映画だもの、こんな世界から抜け出すために行動をとるデリア。一通の手紙を握りしめ、夫や娘に嘘をついて家を抜け出しおしゃれな服に着替えて足早に何処かへ向かう。
向かったその先のこのラストシーンは本当にまったくこれっぽっちも予想してなくて、見た瞬間本気で「あ!」と声が出てしまった。そして超感動してしまった。なんならちょっと下世話なオチを展開を想像していた自分をしばきたい…。
このラストシーンは近年の中でもトップレベルに胸がいっぱいになりました、清々しく素晴らしかったです。これから見る人は絶っっっ対に情報ゼロで行くべし。