内田吐夢×2
お久しぶりの早稲田松竹さんにて「文楽・人形浄瑠璃から生まれた映画」、お久しぶりの内田吐夢体験。実は見てない作品が結構あるけど今さら配信で見る気にはならない中年。
『浪速の恋の物語』(59年)、近松門左衛門原作の恋の物語に近松門左衛門本人が登場(劇中でも人気作家)するというメタ映画みたいな作品でびっくりした。かっちょいいし、久しぶりに何もかもが贅沢な映画を見て大いに満たされる。遊女の前衛的なかんざしの挿し方も素敵。
はじめは遊びに行くのも嫌がっていた飛脚問屋の若旦那、友人(ええ奴)に強引に連れられた遊郭で梅川という遊女と恋に落ちる。金で売買される女を愛するが故に禁断の金に手を出す男、追われる身になるふたり。しかしすぐにふたりは追っ手に捕まるのだが、それを聞いた近松は「私の筆はそんなに冷酷にはなれぬ…」と筆を走らせる。場面変わって、近松が書いたふたりの結末は満員のお客さんの前での人形浄瑠璃の舞台として表現されるラストシーン、いかんせん太夫の語りって言うの?独特な台詞の読み方がイマイチ理解できず、物語としての結末がよくわからぬまま映画は終わってしまい、無念…(誰か知ってる人いたら教えて…)。
『恋や恋なすな恋』(62年)、基本的に濃いめの時代劇を撮る監督のイメージだったのに、こんな映画から文楽からアニメから演劇からのなんでも有りみたいなぶっ飛んだ作品があっただなんてと驚きっぱなし。見ながら思い出したのは鈴木清順だけど、意識してたのかな。
時代は朱雀帝、政権争いに巻き込まれ愛する人を失った男は悲嘆のあまり正気を失い、旅先で巡り合った女の双子に妹に女の面影を求め、更には妹に化けた白狐に面影を求める哀しい恋の物語。これが急に浄瑠璃みたいになったり、狐の親子が出てきたり、セットが転換したりと、変な映画。嵯峨美智子が女を三役演じてるけど、白狐バージョンがやたらとエロい。狐とセックスして出来た子どもの将来がやや不安。
これには英語字幕がついていたので内容がわからないことはなかったのだが、今作の英題が『THE MAD FOX』なのはちょっと笑った。恋どこ行ったんよ。