11.19
『旅と日々』
祝ロカルノ映画祭金豹賞受賞、三宅唱監督最新作『旅と日々』を見に行った。つげ義春の原作漫画は読んだことございません。ちなみにホン・サンスの最新作もまだ見れてない。
89分間、月永雄太による撮影も秋山恵二郎による照明もHi’Specによる音楽も大川景子にによる編集も、そして三宅唱監督による演出も、完璧としか言いようのないショットの連続。夏の海も冬の雪山も男も女も、そして夜の暗さも、よくもまあこんなにすごいものが撮れるもんだと感心しっぱなしで、ここ数年の日本の若手監督作品を全部限界MAXまで最高値にツマミを回したらこうなった、みたいな作品。演出力では向かうところ敵なしなんじゃないでしょうか。だからこそ、映画全体としては特に心が動かされるようなことはなかったのが悔やまれる。
敢えてこう言うけど、「女性監督」たちは自分たちがすでに「喪失」していることを知っていて、その現実と折り合いをつけて生き続けようとする人たちを描くのに対して、最近の男性監督たちは自分たちが何を喪失して喪失していないかに無自覚のまま「喪失」した人間を描き、まるで旅やヴァカンスに行けばそこからの再生や回復や変化が待っているかのような映画を撮りがちだが(もちろん繊細な差異はある)、さすがにそんなに簡単じゃないんじゃないの、正直ちょっと甘過ぎるんじゃないのと思ってしまう。と、すっごい雑に女/男と区別したけど、雑にしてきた結果が今日の状況にもろに出ている気もする。その辺もうちょっと丁寧に真面目に考えた方がいいと思いますよ。
喪失ついでに、マジでみんな「去勢でもされとんか?」ってくらいに性の存在を喪失するよな。PTAのショーン・ペンなんか勃起するだけで500点満点で最高だったのに、あんまりぶりっ子し過ぎるのももったいないで。

