『君と私』
予告を見て勝手に女性監督だと思い込んでた(ミン・ヒジン的な)『君と私』、なんと監督はドラマ「D.P.」に出てたチョ・ヒョンチョルなのね(軍隊もののドラマだからもちろん男性俳優)。
今作は韓国史に残る大惨事「セウォル号沈没事故」を扱った作品と聞いていたのだが、映画が始まった瞬間その画面は岩井俊二か新海誠かってくらいにキラキラした世界、女子高生たちがキャッキャうふふと修学旅行の準備に浮かれている。まあタイトルがそもそもセカイ系丸出しやし苦手なタイプかも…と不安を抱いたのも束の間、気がつけばいつのまにかスクリーンに映るのは惚れた相手に対する執着と嫉妬に狂った女の怒り、悲しみ、その顔。なんだこれは。あの脅威のカラオケ一曲まるまる唄うシーン、映画に出てくるカラオケシーンは昔から好きで幾つかお気に入りの「カラオケ映画」もあるけど、今作みたいなのは初めて見たし、これを実現した監督も役者(『スウィング・キッズ』のパク・ヘス!)もかなりヤバい。ジェラシーとキラキラの共演、ただただ怖い。変です。
女子高生の主人公はカラオケに行ったりプリクラ撮ったり謎のDM相手を問い詰めたりして一日を過ごし、夜には無事好きな相手に自分の想いを伝えることが出来るのだが、彼女たちは翌日から修学旅行に行き、セウォル号に乗る。観客は最初からそのことを知りながらこの映画を見る。私はこれを特に「悪趣味だ」とは思わないけど(坂元裕二とは違う)、なぜ「セウォル号」と「女の嫉妬」なのか、その理由は詳しく聞いてみたいかも。
恋する主人公セミと恋されるハウンがお互い女の子であることに対して作品の中の世界は特にそれを疑問視したり非難したりしないところとか、周りの友だちが無条件に協力的なところとか(ミニオンズみたいで可愛い)には好感、それぞれの家族の描き方も良かったし、HYUKOHのメンバーによる音楽も気持ち悪くてかっこよかった。チョさんには是非映画監督として続けてほしい、次回作も見てみたい。

